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愚物語 ネタバレ感想 するがボーンヘッド (旅に出よう、誰の背も追わない「私らしい旅」に)

『愚物語』を読みました。今回は三編がそれぞれ独立した話っぽいので、短編それぞれに感想を書こうと思います)
愚物語 (講談社BOX)
愚物語 (講談社BOX)

わかった。これ  続・花物語ですね!?

ぶっちゃけ、老倉メインの前篇がアレだったので、不安だったのですが……いい。この短編はいいよ! オフシーズンという意味でなら、こういう話が丁度いい気がします。
『花物語』にて、様々なことから卒業をした神原が、それから  どこを向き、どう歩いていくのか。ライトなミステリーを絡めつつ、それを垣間見ることができたこの短編こそ、蛇足とも言える今巻の正しい在り方な気がしました。  個人的に本作は、《物語シリーズ》における神原駿河のエピローグ、という感じ。つ、続きは書かなくていいからね!?w











ということで、ここからはネタバレ満載感想になります。これ以降、原作を読んでない人はスクロールしたらダメだからね! 読もうとしたらあれだ……あなたが第一艦隊のレギュラーにしてる艦娘が、中破進軍でも轟沈するようになります。  自分で書いといてなんだけど、罰が恐ろし過ぎる。提督のみなさん、逃げてー!
ではでは、以下より感想に入っていきます。


神原「なあ阿良々木先輩、こんなことを言いたくはないけれど、最近ちょっと、私の部屋の掃除が行き届いてないのではないか? (中略)  こんなに中途半端なクリーニングだったら、やってもらわなくても同じだ」


時系列としては『花物語』よりもあと。いつも部屋を掃除してくれる阿良々木くんに対して、神原はそんなふざけたことを言い、怒らせてしまいます  こいつほんとなんなんだw。
このあたりの台詞はほんと、初期の神原らしいというか……ナチュラルに失礼な後輩という、彼女以外ではなかなか見ないキャラクター性を発揮してますよね。敬ってるのに失礼ってどういうことだよ。
ということで、阿良々木くんに愛想をつかされた神原は、自ら『骨までしゃぶるぞ、鬼畜ギャルソン』とかいうBL本などが散乱した部屋を掃除することに。

神原《おかしいな、今日に備えて、収納をたくさん購入しておいたんだけれど、その収納こそが、今、結構なスペースを取ってしまっている……収納を収納する収納が必要だぞ
とりあえず、隣の部屋にいったん、ぜんぶ移そうかな?

……あ。これ、片付けられないやつの思考だ。管理人わかるよ。  だって、僕自身もそうだから。片付けられないやつってとりあえず、モノを目に見えないところに追いやろうとするよね!
そうして、神原が順調に(?)片付けていると、ゴミの山の中に一つ  木乃伊(ミイラ)の左手を見つけてしまいます。……それは、沼地が。
彼女が集め、最後には忍が食べ終えた、過去の遺物だった筈なのに。

「おやおや。食べ残しがあったんですかねえ?」
神原「うわあ、びっくりしたあっ!」

ほんと、扇ちゃ  ではなく扇くん、神出鬼没過ぎるだろ。タイミング良すぎるだろ。なんでもありか。
まあ、《物語シリーズ》において彼は、権限を与えられているというか……臥煙さんとかと同じく、「なんでもあり」が許されているキャラではあるんでしょうけどね。
だからこそ、ある程度のメタな発言も、許されてるのかもしれません。

神原「プリクラって一回五百円くらいでとても安いから、すぐにいっぱいになっちゃうんだよな」
扇「はっはー。そうですか、とても安いですか。誰かさんに聞かせてあげたい台詞ですね
神原「誰かさん?」

扇「いえいえ。まあ、あのかたが目を疑うくらい、伏字にしなきゃ出版できないんじゃないかってレベルで陰湿な第一話を展開してくれましたから、不肖僕なんかは、ここからめいっぱいコメディを担当させていただこうと存じていますよ

許した。扇くんのこの発言で、老倉の話があんなだったのは許した。  やばい、これじゃあ僕ただの西尾信者だ! なにを今更って話ではあるんだけどね!
でもこれ、こんな台詞を書いてるってことは  西尾先生、「これ陰湿だなあ……やばいなあ……」って自覚がありながら、あれを書き上げたということになるよね? ……うん。ええと……な ぜ 自 重 し な か っ た!!!?w
ただ、そういう自覚があったにも関わらず、方向性を変えなかったということは  老倉のその後を描く、という性質上、ああならざるを得なかった、という話なのかな。それにしたってもうちょっとこう、あれだ……なんでもないですw。

と、ともかく! 話を本筋に戻して  神原家のゴミ山から発見された木乃伊の左手。神原はそれを、扇くんが突如現れて驚いた拍子に、ふすまにぶん投げてしまいます。
ふすまに突き刺さったそれを取りに行く扇くん。すると、その木乃伊の手に握られていたのは、不思議な暗号の書かれたメモ  神原の母親、臥煙遠江の残した手紙でした。

……この辺りの暗号解読は、さっぱりでしたねえ。僕自身、そういうのには疎い人間でして、どうにもならんかったです。
ただ、作中における神原と扇くんも、仮説は立つもののどうにもならなかったようで。《羽川先輩なら一瞬で解いてしまうのかも》と神原に言われた扇くんは、敵愾心からこんなことをしでかします  

扇「僕だってその気になれば、こんな暗号文、一瞬で解けますよ
(中略)
神原「もしも本当に正解を言い当てることができたら、きみの名前を尻文字で書いてやってもいいぞ」
扇「実際にされたらたぶん、自分でも驚くほどにどん引きすると思うので、遠慮します  一言すごいね扇くんと誉めていただければ、それで僕の小さな虚栄心は十分満たされるのですよ  では」

<扇くん。木乃伊の左手を、高らかに持ち上げつつ  


猿の手よ! どうかこの暗号文を解いて……」
神原「すごいね扇くん!」


《一言褒めつつ、一発ぶん殴った。》


怖い怖い怖い!w そんなことで猿の手に願おうとできる、扇くんの精神性が怖い!w
『終物語(上)』にて、行動力がありすぎる、みたいな印象を阿良々木くんに持たれていた扇くん(ちゃん?)ですが、それがこんなところにも……ほんと、一番怖いやつって、何考えてるのかわからないやつだと思うの。

とまあ、そんな色々を経まして……扇くんが阿良々木くんの電話で退席している間に、神原のもとに来客が  沼地の姿をした臥煙遠江が、現れました。
そして、彼女は示唆します。神原が過去に願った、猿の手  レイニーデビルの欠片。木乃伊のパーツは、放っておくと病原菌のように蔓延してしまうことを。
しかし、それを伝えてもなお、彼女は神原に強制しません。
  進むのなら、自分の意志で。そう、娘に伝えます。


臥煙遠江「ま、あんたは誰の意志も、誰の遺志も継ぐ義務なんかないし、誰もあんたにそんあことを望んでいない  あたしはそれだけ言いにきたんだ。あんたはあたしでも、この女の子でも、ましてや阿良々木暦くんでもないんだから。いちいち、何かをしようってときに、あたしを口実に使われてもたまらんってえクレームさ。やるなら自分の意志でやれ。頑張るなら、自分の意味で頑張れ


先輩達が卒業した学校にて  物語にて。
神原は、ある再会をしました。

沼地じゃあね、神原選手。もう二度と会うことはないと思うけど、精々元気でやってくれ。なんかこう……受験したり、友達を作ったり、彼氏を作ったり就職したり結婚したり子供を育てたり、親子喧嘩をしたり。そういう人間っぽいことをしてくれよ  


「それは私にはできなかったことだから



彼女の名前は沼地蠟花。神原の憧れであり、あり得た未来であり  最高のライバル。
もう大好きな先輩達には頼れない頃に、神原はそんな彼女ともう一度出会い、色々と悩むことになります。

彼女を助けることが、彼女の救いになるのか。自分の不幸すら知らない彼女に手を伸ばすのは、正しいことなのか。
この手は、邪魔になるのじゃないか。むしろ、彼女を傷つけるんじゃないか  

そんな風に苦悩する神原に、ある先輩からのアドバイス  阿良々木「だけどさ、神原  誰も困ってないってのは、嘘だ。少なくともひとり、お前が困ってる。  そしてそれは、お前が動く理由に十分なるんだ」
それを受けて、神原は決意……行動に移します。


神原私がお前を、見てられないからだ


それはまるで、彼女が憧れた先輩のように。
阿良々木暦が、そうしたように  神原もそうしたかったから、沼地に手を伸ばしました。

  そう。沼地の一件を経て、神原はもう既に、手の伸ばし方をわかっていました
「薬になれなきゃ毒になれ。でなきゃあんたはただの水だ」  その答えを、自らで一度出していました。……だから。
だから、そうするのも当然だった。
沼地蠟花という救われない少女を救った神原が、そういう道を選び取るのは、至極当然の決断だった  

神原「だって、明日は早速、この地図に書かれている場所に行かなくちゃならないだろう  行って、パーツを一部でも、回収しないと

暗号を解読して、木乃伊があるらしい場所が判明したのち、彼女は扇くんにそう言います。  木乃伊を回収すると。
沼地が残したことを。母親が遺したこと  貰い受けると。
自分の意志で。自分の言葉で。彼女は、そう告げます。
それは、誰に強制されることのない、神原駿河の選んだ道でした  

<神原>
あの人は、木乃伊のパーツなんて、探さなくていいと言った。
 沼地蠟花の意志を継がなくていいと言った。
 臥煙遠江の遺志を継がなくていいと言った。
 ならばこれは  私の意地だ。


沼地に。母親に託され、木乃伊の蒐集を始めるのではない。
ただ、自分がそうしたいと思ったから  二人の置いていった荷物を、彼女が背負っただけのこと。
引き継いだんじゃない。受け継いだわけでもない。  残されたものを、貰い受けただけ
それが、神原が今回の出来事を経て決めた、未来だったんです。

扇「部屋のお片づけはどうするんです! こんな目も当てられない惨状の自室を、あなたはあろうことか、罪深くも放置しようと言うのですか!
神原「阿良々木先輩に謝って頼んで泣きついて仲直りして片づけてもらう。私は、他にやることができたから。気持ちの整理を、私はつけよう  ストレスも、願いも、溜め込むのは、もう終わりだ
扇「…………」


神原阿良々木先輩みたいになりたいと思った  あの人みたいに、人に優しい人になりたいと、人を助けられる人になりたいと思っていた。だけど、それはやっぱり、違うんだ。どれだけ憧れても、私は阿良々木暦じゃない沼地蠟花でも、臥煙遠江でも、まして戦場ヶ原ひたぎでもない  私は私にならないと。阿良々木先輩が、目が届き、手の届く誰かのために、いつも戦う愚か者なら  私は、顔も知らない誰かのために、どこかで迂闊にも失敗しそうな手に負えない誰かのために、いつも戦う愚か者になるよ


そうして彼女は、憧れていた先輩とは、少しばかり違う道を。
重たい荷物を勝手に背負って、神原は歩き出します  



<神原>
《そうやって私は、阿良々木暦を越えよう
 私にとって望ましい神原駿河になろう。》



いつの日か、その足で  
憧れを越えるために。





いやー、良かった!
老倉の話がアレすぎて、不安いっぱいでしたが……良かった! 『花物語』にて、自分というキャラクターを「演じて」いたと判明した神原が、最後  「私は私にならないと」と言ったことに、不覚にも感動しましたよ……このセリフがあっただけでも、『愚物語』が出版される意味があった気がします。
それにしても、この短編を読んで思ったのですが……今回の『愚物語』は、阿良々木くんに助けられた  助けられなかった彼女達が、彼に影響を受けた結果、どうなったのか、という後日談の集まりなのかもしれませんね。自分のエゴで問題を解決して「阿良々木派よ」と言い放った老倉しかり、彼の在り方をきっかけに木乃伊蒐集家になった神原しかり。……もちろん、彼女達の行動の全てが阿良々木くんの影響、とはまったく思わないですが、今作にて彼女達がした選択は、阿良々木くんとの出会いに起因していると感じたので。
でもそう考えると、次の短編に出てくる斧乃木ちゃんも、阿良々木くんに影響を受けてたということ……? やべえ、超楽しみなんですけど!



以上、『愚物語・するがボーンヘッド』の感想でした。
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なぜ臥煙遠江は将来結婚することになるボーイフレンドにラブレターとして木乃伊のありかを示す地図を送ったのでしょうか

屈折した愛情表現なのでしょうか
それともラブレターではなく自分たちが将来一人娘を遺して死亡し娘が神原家に預けられることを見越しての行動なのでしょうか
それとも物語の最後に見つかった木乃伊の二文字の部位が何か愛を示すようなものだったのでしょうか(どうやら他の襖にも木乃伊の地図がありそうな雰囲気なのでそれら全てを集めた時に分かるメッセージかもしれません)
呼んでてさっぱり分からなかったので主さんの意見を聞かせてください!
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Author:Mr.Kids
ライトノベルに現在進行形ではまっています。
読んだラノベの中でも特に好きなやつの感想を書いていきます。

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